キミノタメノアイノウタ
「本気か?」
「僕はいつだって本気だよ」
ユキの口から発せられるのは俺達の距離を広げていく言葉ばかりだった。
「もう荷造りはした。今から出て行くよ」
カタンと椅子が引かれて、ユキが立ち上がる。
もう、ユキをとめることはできないのだろうか。
ハルは最後まで俯いていて、ユキを見ようとしなかった。
「ユキ!!」
俺はユキの後を追いかけて玄関まで走った。
ユキの荷物は驚くほど少なかった。
最低限の荷物だけ持ってここを去るつもりなのだ。
「ごめんね、灯吾」
こんな時でさえ、ユキは微笑んでいた。
……泣きたくなった。
それでも我慢したのは俺以上に辛い思いをしてる人物を知っていたからだ。