キミノタメノアイノウタ
ユキはゆっくりと俺に背を向けていく。
「待てよっ!!ユキ…っ…!!」
俺の足は地面に縫いつけられたかのように動かなかった。
喚いてもどうにもならない。
ユキの決心は固く、俺はその心に踏み入れることは許されなかった。
俺に頼まなくてもユキが傍にいればハルは歌える。
ハルにはユキが全てだった。
ユキがいたからあんなに強くいられた。
ハルはユキの傍にいたからこそ輝くことができた。
「待…て…よ…っ…!!」
膝から崩れ落ちる。
「待ってくれよ…っ…!!」
悔しくて、悔しくて涙が頬を伝う。
……どうしてこのままじゃいられないんだろう。
まだ子供だった俺にユキが全てを捨てて出て行った理由なんてわかるはずがなかった。