キミノタメノアイノウタ

ユキを探しに街へ出て行ったこともあった。

その度に侑隆と2人で探し回って家に連れ戻す。

ユキがこの街にいるはずがない。

それでもハルはユキを求めて街を彷徨う。

その度に、あの時ユキを引き留められなかった自分を歯がゆく思う。

……ユキはハルの心までも連れて行ってしまったようだった。

そんな心神喪失状態のハルが唯一心を動かすときがある。

それは俺が歌っているときだった。

俺が歌い始めると覚束ない足取りで隣に座る。

頭を傾けて目を瞑る。

時折、涙を流すときもあった。

無意識にユキのことを思い出しているのかもしれない。

俺が歌う曲はユキとの思い出が詰まっているのだから。

歌の練習をするときはハルの傍で。

それが半ば習慣になった時、俺は侑隆に尋ねられた。

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