キミノタメノアイノウタ
19
……俺はどうしたら良いんだ。
歌うことが好きだった。
歌えなくなったら生きていけない。
……でももう誰のために歌ったらいいのかわからないんだ。
俺はハルを救えなかった。
誰よりも救いたかった人を救うことが出来なかった。
声が出なくなったのは。
……後ろめたかったからなんだと思う。
ハルはこの世にいないかもしれない。
そう思うと怖くて…心のどこかでブレーキがかかった。
ハルがいたから…歌えた。
また、真っ白な世界に戻ってしまった。
音がなにも聞こえなくなっていた。
あんなに溢れていた音がひとつも聞こえない。
海の音も、風の音も蝉の声だってこの町には溢れているのに。
……何ひとつ俺の心に響かない。
絶望すら感じる。