キミノタメノアイノウタ

「お前、本当に歌えるようなったのか…?」

侑隆はよっぽど疑り深い性格なのか。

……先ほど自分の耳で聞いていたくせに、やっぱり信じられないようだ。

「ああ」

俺自身も驚いている。

……あんなに苦しかったのに。今はこんなにも清清しい気分なんだ。

「タイミングが良いと言うべきかな…」

侑隆がポリポリと頭をかいた。

「悪い知らせがある」

侑隆がこんな真面目な顔で物を言うときはろくな事がない。

……嫌な予感がした。

「マスコミがここを嗅ぎつけたらしい」

予想していたことではあったが、俺は落胆した。

(やっぱり…)

マンションに身代わりを置いてきたというのに、やっぱりいないことはばれてしまうものなのか。

< 377 / 409 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop