キミノタメノアイノウタ
「お前、本当に歌えるようなったのか…?」
侑隆はよっぽど疑り深い性格なのか。
……先ほど自分の耳で聞いていたくせに、やっぱり信じられないようだ。
「ああ」
俺自身も驚いている。
……あんなに苦しかったのに。今はこんなにも清清しい気分なんだ。
「タイミングが良いと言うべきかな…」
侑隆がポリポリと頭をかいた。
「悪い知らせがある」
侑隆がこんな真面目な顔で物を言うときはろくな事がない。
……嫌な予感がした。
「マスコミがここを嗅ぎつけたらしい」
予想していたことではあったが、俺は落胆した。
(やっぱり…)
マンションに身代わりを置いてきたというのに、やっぱりいないことはばれてしまうものなのか。