キミノタメノアイノウタ
20
ふうっと深呼吸する。
これから一世一代の大勝負にでる。
深呼吸は一度では足りなかった。
もう一度、深呼吸をする。
幾分、心が楽になった気がした。
私は職員室の扉をノックした。
「失礼しまーす」
夏休みの職員室には先生は数えるほどしかいなかった。
……もともと両手で数えるほどしかいないけれど。
浅倉は椅子に座って、コーヒーを飲んでいた。
これから部活動に顔を出すのかジャージを着ている。
傍まで寄って肩を叩いた。
「先生」
「田中?」
私が訪ねてきたのがよっぽど意外だったらしい。
「どうした?」
くるりと椅子が回転する。
浅倉が隣の先生の椅子を引き寄せて、私に座るように促した。
私はすすめられた椅子を断って、立ったまま告げた。