キミノタメノアイノウタ
自転車は私を乗せると急発進していく。
奏芽はがむしゃらにペダルを漕いでいた。
「奏芽…どうして…」
「さっき瑠菜の家に行ったんだ。その時、聞いた」
奏芽の身体から滝のように汗が噴き出ていた。
「わ…私…」
……奏芽に謝らなければいけない。
傷つけてごめん。ひどいことを言ってごめん。
許してもらえるならどんなことでもする。
そう言いたいのに、声が震えて言葉にならなかった。
「謝るなよ」
……奏芽はすべてを察してくれた。
「謝るな」
もう一度、念を押される。
「俺は…振られたけどやっぱり瑠菜が好きだ。何年も温め続けてた想いはそう簡単には捨てられない…」
その時、目の前に海が見えた。
潮風が鼻をつく。
「でも…」
今日の風は追い風。
風向きは良好。