キミノタメノアイノウタ

「行くぞ」

兄貴が灯吾に車に乗るように促す。

別れはいつだって次の出逢いへの始まりだ。

そのことを知っているからもう怖くない。

私達の道が別れたとしても生きていける。

そう思って、灯吾の身体を離す。

灯吾は黙って車に乗り込んだ。

タツの車のエンジンがかかる。

発進する車の窓から灯吾が顔を出した。



「俺、歌うから!!いつだって歌っているから!!」



そう叫ぶ声が私にまた勇気をくれる。

車が見えなくなった途端に私はその場に崩れ落ちた。

きっと忘れない。

この胸の痛みも、灯吾の歌も、笑顔も、ぬくもりも、全部。

全部、抱えてこれからも私は生きていく。

(灯吾……!!)

私は……灯吾のことが。

……好きでした。

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