キミノタメノアイノウタ
「さむっ!!」
そう言いながら坂道を自転車で駆け下りていく。
制服が冬服に変わったものの、コートはまだ着ていない。
唯一の防寒具であるマフラーに顔を埋める。
風が冷たい。
耳が凍りそうなくらい冷えている。
灯吾と別れてから早3ヶ月。
季節は夏から秋、そして冬へと変わっていった。
気温はぐっと下がり、朝起きるのが少し辛い。
木々は緑から茶色へと色を変え、寒さに耐えていた。
私はというと……相変わらず普通の日常を送っている。
今日も千吏と奏芽と勉強して、明日も朝から学校だ。
あの夏から変わったことといえば、進路だった。
恵じぃが頑張ってくれたお陰で、私は父さんを説得することに成功した。
父さんもまさか恵じぃにお説教されるとは思っていなかったのだろう。
口をあんぐりとさせている姿はそれは見物だった。
少し不安もあるけど、私はまあまあ元気でやっている。
……灯吾は今日も歌っているのだろうか。