キミノタメノアイノウタ
……ひどく懐かしい声が後方から聞こえたような気がした。
信じられない。
私は恐る恐る後ろを振り返った。
「よっ!!」
まさかとは思ったが、灯吾が片手を挙げて立っていた。少しだけ髪が伸びている。
「ここで何…してんの…?」
灯吾はこの町から何百キロも離れた街にいるはずだ。
私は本当に驚いて、持っていた包みを落っことした。
「歌を届けに」
「わざわざ…?」
「そう、わざわざ」
(こんなド田舎まで?)
私の疑問はまだまだ続く。
「な…んで…」
……灯吾はもうazureの古河灯吾に戻ったのではないか。
あの街に帰ったってことはそういうことだ。
こんな田舎にもう用なんてないはずだ。