キミノタメノアイノウタ
「ハルから手紙が来たんだ」
灯吾はジーンズのポケットから便箋を取り出した。
差出人は”相沢春菜”
……ハルさんだ。
「俺の歌、毎日聞いてるって。信じられるか?あいつ、子供がいるんだって」
私は灯吾に渡された便箋の中の文字を追いかけた。
そこには絶望から立ち直ったハルさんの現在の生活の様子と、兄貴と灯吾への謝罪の言葉が書き連ねてあった。
「……届いていたんだ。俺の歌」
私は何も言えなくなった。
便箋に涙を落とすまいと必死に堪える。
「泣くなよ」
「だって……嬉しくて」
……ハルさんが生きていてくれて良かった。
灯吾の歌がハルさんにも届いていて良かった。