キミノタメノアイノウタ
3
「どうした?寝不足か?」
そう尋ねられてドキリと心臓が小さく音をたてた。
兄貴は私の寝不足で赤くなった目を覗き込むと、味噌汁のお椀を渡してお代わりを要求した。
「別に……なんでもない」
鍋の中の味噌汁をよそって兄貴に渡すと、エプロンを外して椅子の背もたれにかける。
兄貴はお椀を受け取ると、行儀悪く箸をくわえながら私をじっと見つめてくる。
誰も知らないはずの昨日の出来事が頭の中に蘇ってくる。
兄貴の視線が何もかもを見透かしているような気がして、急に居心地が悪くなる。
私は逃げるように口早でまくし立てた。
「食べ終わったら洗っておいて!!灯吾が起きてきたら、温めなおして食べるように言っておいてよ!!じゃあ、学校に行ってくるから!!」
私は通学用の青いナイロンバッグを肩にかけると、慌てて家から駆け出した。