キミノタメノアイノウタ

「ほら、早く買ってこないと昼休みが終わるよ!!」

そう言うと奏芽が思い出したようにピクリと反応して、教室から駆け足で飛び出していった。

昼休みの時間に合わせてやってくる購買のおばちゃんは、人が来なくなるとさっさと店じまいして帰ってしまう。

急がないと間に合わないかもしれない。

千吏はニヤニヤと楽しげに私を眺めながら言った。

「世話好き」

「……うるさい」

……こっちだって好きで世話焼いてるんじゃないやい。

千吏は食べ終わったパンの袋をグシャリと握りつぶして噛みしめるように言った。

「あーあ!!早く受験なんて終わんないかなー!!」

疲れたように椅子に大きくもたれかかるその姿は、まさに受験ノイローゼにかかった学生のようだった。

「勉強嫌いの千吏がよく受験なんてする気になったよね」

あの千吏が。

奏芽と一緒に私に頭をはたかれていた千吏が。

教科書は枕代わりと豪語してならなかった千吏が。

あまりの変貌振りに驚きを通り越して、逆に感心してしまうほどだった。

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