キミノタメノアイノウタ
「瑠菜ー。アイス買ってー」
「やだ」
「瑠菜ー」
「やだってば」
「る…」
「早くこいでよ。スピード落ちてるんですけどー」
足をぶらぶらと揺らして、奏芽を煽る。
海から吹く潮風に負けた自転車からは既に先ほどまでの勢いは消えていた。
私を荷台に乗せたまま汗水たらして立ち漕ぎをしている奏芽が、恨めしそうに後ろを向く。
「それは瑠菜が太ったせいだろ?」
「うるさい!!」
自分の体力のなさを棚に上げる奏芽に向かって拳を振り上げる。
部活を引退してからすっかりトレーニングを怠けていたが、太ったつもりもない。
軽口をたたいた男の頭に真っ直ぐ制裁を与える。
いて!!と、叫んだ奏芽を見て、ようやく腹の虫がおさまる。
太ったと言われて腹が立つのは仕方がない。だって女の子ですから。