キミノタメノアイノウタ

「次に太ったなんて言ったらもう起こしてやんないから」

「俺としてはその方が嬉しいんですけど」

「寝てた罰として特別課題を出血大サービスだって先生が燃えてたよ」

半袖短パン姿なのになぜか暑苦しい我が担任の顔を頭に思い浮かべる。

45歳、熱血教師。趣味、愛のムチという名の教育的指導。

「モテモテだね?」

「手伝ってくれるんだよね?瑠菜ちゃん?」

「さあ?」

ご機嫌を取ろうと猫なで声を出す幼馴染に向かって、笑顔でとぼけてみせる。

奏芽の頬は徐々に引きつっていった。

「っあー!!やってらんねーよっ!!」

自転車は奏芽の憤りを原動力にして再び加速していく。一心不乱にペダルをこげばぐんぐんと景色が変わっていく。

……態度次第では手伝ってやらないこともないのに。

私はあえて黙っていた。

頬に感じる心地よい風が気持ち良かったからだ。

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