キミノタメノアイノウタ
そのまま家までの道のりをひた走っていると、海岸の方に見覚えのある姿を発見した。
「ごめん!!とめて!!」
私は慌てて奏芽のリュックを叩いた。
急ブレーキのために傾いだ体を立て直して、すぐさま地面に足をつける。
「なんだよ!!」
「ここまででいいや。じゃあね、奏芽!!」
私は奏芽の訝しげな視線をよそに、砂浜を囲うように作られた堤防へと走って行った。目的の人物は堤防の淵に座っていた。
「なにしてんの?」
後ろに立って頭上から声を掛ける。
目的の人物、もとい古河灯吾は真上にいる私を首を仰け反らせて見上げた。
「なにもしてねーよ」
……何もせずにこんなところにいて何が楽しいんだか。
昨日といい、今日といい、灯吾のしていることはさっぱりわからなかった。
「隣、座っていい?」
「どうぞ」
私は制服のスカートをならすと、灯吾の隣に腰を下ろした。