キミノタメノアイノウタ
「学校ってどこにあるんだ?」
私は伏せていた顔を上げて、高台の一角を指差した。
「あそこ、白いやつ」
木々の隙間から見える校舎の壁は塗り替えられたばかりで真っ白だった。
へえっと、灯吾が楽しそうに声を上げる。
「いつも歩いて行くのか?」
「そうだよ」
「自転車の彼氏と一緒に?」
「もしかして、奏芽のこと?」
……面倒なことになった。
まさか、奏芽と一緒にいたところを見られていたとは。
灯吾はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていて、明らかに私の反応を楽しんでいた。
「奏芽は幼馴染なの。それ以上でもそれ以下でもありません」
よく誤解されるけど、私と奏芽の間にそういう関係が成り立ったことなんて一度もない。
淡々と否定すると、灯吾は至極残念そうに言った。
「なんだよ。つまんねーな」
「もう、見てたなら最初からそう言ってよ……」
灯吾は私の短い髪の毛を無造作にグシャグシャと撫で回した。