キミノタメノアイノウタ
「みんなして面白がりやがって…」
「すねるな、すねるな」
タツさんがよしよしとからかうように頭をポンポンと叩く。これがタツさんなりの年下の従兄弟の可愛がり方なのだろう。
奏芽くんは完全に不貞腐れてちゃぶ台に突っ伏した。
台所からは何とも言えない良い匂いがして、俺達の腹の虫が激しく動き出す。
奏芽くんとタツさんの分の夕飯も作っている瑠菜は、忙しなくあちこちの扉から食材やら調味料を取り出しては鍋に放り込んでいた。
それでも、料理に関してなんの役にも立たない3人組は大人しく待つしかない。
今日は瑠菜の両親はそれぞれ仕事で遅くなるそうなので、食卓を囲うのはここで待っている3人と侑隆と瑠菜だけだった。
俺は空腹を紛らわすように奏芽くんに尋ねた。
「それにしてもどうしてこんなに似ているんだ?」
奏芽くんはちゃぶ台に突っ伏したまま、一向に答えようとしない。
……俺は完全に嫌われたらしい。
ちょっと悲しい気分に浸っていると、ビールを呷っていたタツさんが代わりに答えてくれた。