キミノタメノアイノウタ
「俺の父親と奏芽の父親が一卵性双生児なんだよ。それで、なんでか俺達が揃って親父似なんだよ」
「へえ…」
「ちなみに最近じゃ恵じぃも孫の俺達を見間違える」
(そうか、ふたりとも恵三じぃさんの孫なんだな)
頭に家系図を思い浮かべる。恵三さんの子供がタツさんと奏芽くんの父親で双子兄弟で、その子供がタツさんと奏芽くんという訳か。
「あれは見間違えてるんじゃなくてボケてんだよ!!」
今まで沈黙を守っていた奏芽くんが跳ね起きて、グッと拳を握り締めてちゃぶ台を叩いた。
「わざわざ俺に!!パイ娘のCD買ってこいって言うのは絶対にわざとだろう!?」
恥じらいのせいか、パイ娘の単語だけが小さく聞こえる。
(なるほど……)
……恵三じぃさんはこうやってCDを手に入れていたのか。
「それは仕方ないな。押し切られるお前が悪い」
「年寄りの涙は反則だ……」
文句を言いながらも恵三さんのためにCDを入手する奏芽をくんを想像したら少し笑えた。
それと同時に瑠菜が居間に入ってくる。
「ご飯できたよー」
「はーい!!」
奏芽くんは先ほどの様子が嘘のように軽やかなステップを踏んで廊下へに飛び出して行った。