キミノタメノアイノウタ

「そう言えば侑隆は?」

タツさんが思い出したように瑠菜に尋ねる。

「まだ寝てるんじゃないの?」

「俺が来た時も鍵は開けっ放しだったぜ?」

奏芽くんが来ようと、俺と瑠菜が帰ってこようと、タツさんがやって来ようと。

侑隆は一向に姿を現さなかった。それは夕飯の支度ができても同様だった。

(あいつ…寝すぎだろう……)

「起こしてこようか?」

気を遣って申し出た奏芽くんをタツさんが慌てて引き留める。

「やめとけ。あいつの寝起きの悪さは俺がよーく知ってる」

タツさんの顔はひきつっていた。

「あいつを起こすなら死ぬ覚悟でやれ」

奏芽くんはなにかを察したのか、また元の位置に戻った。 

「侑隆ってやっぱり昔から寝起き悪かったんだ……」

侑隆の寝起きの悪さといったら……言葉では言い表せないくらいだ。

仕事に行く前は戦争さながら完全防備して侑隆を起こさないといけない。

そうしないと。

……殺られる。

まさか、こんなところにも被害者兼仲間がいるとは。

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