キミノタメノアイノウタ
「お前の方がよっぽどうるせーよ」
ガツンと奏芽くんの頭に侑隆が拳を振り下ろした。睡眠半ばで起こされたことへの、やつ当たりとしか思えない。
侑隆は痛みで悶えている奏芽くんの後ろをすり抜け、台所に置いてあった夕飯の元へふらふらと歩いていった。
「腹へった……」
……奏芽くんへの攻撃は空腹だという憤りもプラスされていたようだ。
「いてーよ!!侑隆さん!!」
「あ?タツ、どーしたんだお前。制服なんて着て、コスプレか?」
(うわあ、可哀想……)
完全にタツさんと間違えられて、奏芽くんは見るからに肩を落とした。
「侑隆、こいつは奏芽だよ。俺の従兄弟の」
タツさんが見かねてフォローをいれる。
「奏芽…?従兄弟……」
思い出そうとしているのか、侑隆の動きが止まる。口が再び開くまでたっぷり5分も待った。