キミノタメノアイノウタ
「わかったらお前が瑠菜の進路に口を出すな」
いいな?と侑隆は諭すように言った。
「俺は……ただ瑠菜が心配だっただけで……」
「そういうお前の方はどうなんだ?」
ばつが悪そうだった奏芽くんに今まで沈黙を守っていたタツさんが初めて口を開いた。
「おばさんが愚痴言ってたぞ。うちの息子は将来のことを全然考えてないってな」
あのバカ母…と奏芽くんの口から苦々しいため息がもれる。
「奏芽、お前もそろそろはっきりさせたらどうだ?」
「タツに言われなくてもわかってる」
きっと何度も周りからせっつかれているのだろう。
奏芽くんはうんざりしたように頭を掻くと、おもむろに立ち上がった。
「今日は帰る」
奏芽くんは使った食器を片付けると、ダイニングから出て行った。
「おばさんによろしくな」
タツさんはそう言うと、奏芽くんの背中に向かってヒラヒラと手を振った。