キミノタメノアイノウタ
「じゃあ、俺も帰るか。あの青春小僧にお説教もかましたしな」
タツさんはビールを一気に飲み干すと、ご馳走様と呟いてコップをテーブルに置いた。
「いいよな、あいつらは。ひたすら、がむしゃらに今を生きてる感じがたまんなく青臭くて」
奏芽くんの分の食器も一緒に洗いながら、タツさんは心底羨ましそうに言った。
大人になったからこそ余計に思うのかもしれない。
……今を生きるということがどれだけ難しいことか。
奏芽くんも、瑠菜も。
この時、この一瞬を生きている。
(俺はどうだろうな……)
侑隆が奏芽くんに浴びせていた言葉はかつて、俺自身に向けられていたものだ。
そして。
……俺は今でも自分の道を決めかねている。