キミノタメノアイノウタ
……とんでもない報告をされてしまった。
私は千吏の部屋のクッションをぎゅうっと胸に抱えた。
もはや恒例となっている週一回の勉強会は、いつも千吏の家で開催されている。
私が教えたポイントを踏まえながら一心不乱に問題に取り組んでいる友人の様子を窺う。
千吏の目は真剣そのもので、志望大学を決めた覚悟と焦りで揺れていた。
(千吏なら…本当に受かるかもしれない…)
千吏は貪欲だ。
自分が願うこと、手に入れたいと思う物に対して、真っ直ぐに向かっていく。
私みたいに迷ったりなんかしない。
……千吏が少し羨ましかった。
(ダメだ……)
これ以上、余計なことを考えないようにと小さく首を振って唇を固く引き結ぶ。
私は私が思った道を行くんだ。
そう決めたのは……他ならなぬ自分自身だ。
こんなことで揺らいではいけない。