キミノタメノアイノウタ
兄貴のことを考えると、なんだか胃がムカムカとして気分が悪くなってきた。
千吏はそんな私の様子には気が付かず、おずおずと本題を切り出した。
「それでさ…。ママが瑠菜がこの辺の人じゃない男の子と歩いてたの見たって言うんだけど…」
千吏の目には兄貴のことを聞いた先ほどとは異なる好奇心が宿っていた。
(ああ、灯吾のことか)
知られてしまったのなら仕方ない。この小さな町で灯吾のことをいつまでも隠しておくのは無理がある。
「……兄貴の友達」
そう告げると千吏の表情が途端にぱあっと明るくなった。
私の両手を握って懇願する。
「紹介して?」
……絶対、こうなるから言いたくなかったんだ。