キミノタメノアイノウタ
「瑠菜のケチー。オニー。ガリ勉ー。田舎もん」
「どうせ、私は田舎もんですよ」
千吏の罵詈雑言もなんのその。
問題の解答が書かれたノートに丸とバツをつけながら、いじけて膝を抱えて丸くなっている千吏によーく言い聞かせた。
「あのね?どうせ灯吾は兄貴と帰っちゃうの。紹介しても仕方ないでしょうが。彼氏にするなら隣のクラスの吉田くんにしときなよ」
隣のクラスの吉田は田舎者にしては顔はそこそこ、ちょっとアホなのが偶にキズだが良い奴だ。
千吏だってこの間までは吉田にキャーキャーと黄色い声援を送っていたではないか。
「いいじゃん。イケメンは目の保養になるしさ!!」
……灯吾ってそんなに顔立ち良かっただろうか。
千吏のイケメンの基準はさっぱり分からない。
まあ、それは私がそういう顔の造形や、色恋沙汰に無頓着だからだろう。
「わかったら紹介して?」
「しないから」
隙を見計うように紹介の文字を挿入してくる千吏に、答え合わせしたノートを返す。