キミノタメノアイノウタ
「推薦をもらうからといって気を抜くんじゃないぞ」
父さんはテレビから目を離さずに、私の背中に向かって言った。
「……わかってる」
もう何も言うまいと、唇を固く結んだ。
“私があの大学を選んだのは父さんのためじゃない”
そんなことを言ってどうなるのだろう。
私がどう言おうと、父さんが望んだ進路を辿るというなら結果的には同じことだ。
「お風呂に入る支度してくるね」
私はそう言い残して部屋に戻った。後ろ手に襖を閉めると、その場にへたりこむ。
……良い気分はしない。
奏芽が心配している理由だってちゃんと分かっているつもりだ。
それでも、私はこの町から離れたくない。