キミノタメノアイノウタ
「別に。俺もたまには自分でやろうと思っただけだし」
奏芽の手の中でシャーペンがくるくると回る。集中している時に、奏芽がやる癖だった。
「ふーん…」
(珍しい……)
日々の宿題だっていつも私が見せてたのに。
私は空いてる椅子を引き寄せて奏芽の前に座った。
「ねえ…」
「なんだよ?」
奏芽は片眉を上げながら紙パックの紅茶にストローをさした。
「ここ、間違ってない…?」
「マジ…?」
奏芽ははあっとため息をついて、消しゴムで解答を直し始めた。
「だーっ!!くそっ!!浅倉のやつ!!わざとややこしい問題出しやがって!!」
あのヒゲっ!!と、ぶつぶつと浅倉への恨みを吐いていくのを私は笑って聞いていた。