キミノタメノアイノウタ
「土曜日って今週の?」
「当たり前だろう」
念のため尋ねてみたが、浅倉の答えは変わらなかった。
(土曜日って、たしか母さんは旅行って言ってなかったっけ?)
居間に飾ってあるカレンダーには数か月前から”母、旅行”の文字が赤色で書かれている。
もし、母さんが来られないのならば代わりに面談にやって来るのは。
……父さんだ。
「先生!!」
「じゃあ二人ともよろしくな」
浅倉は引き留めようと片手を伸ばした私に気が付かずに、とっとと職員室に戻っていった。
(ああ、もう…!!)
……父さんと三者面談なんて絶対嫌だ。
「瑠菜?」
突然、様子がおかしくなった私の顔を奏芽が心配そうに覗きこむ。
「奏芽…。私、面談終わったかも…」
奏芽は何も言わず意気消沈した私の頭を撫でた。
「大丈夫だ。俺なんか最初っから終わってるから」
「それ、慰めになってないよ!!」
その日、私はトボトボと家路についたのだった。