清皇学院記
 ベンチで寝ている蓮を見つけた

玲華は、蓮を起こすべきなのか

一瞬迷ってしまった。


 いつもは大人びて見えるというか

中学生とは思えない容姿の蓮の

寝顔はまだ子供っぽくてもう少し

見ていたいという気持ちになったからだ。

「蓮、起きて」


 そう一声掛け、玲華は蓮の肩を軽く叩いた。

「んん、し…、なの?」

「うん」
 

 蓮はのろのろと起き上がり、まだ

眠そうに目をこする。

「ごめんね、起こしちゃって」

「いや、いいよ。呼び出したの俺だし」


 いつまでも眠そうにする蓮を見て、

玲華は少し申し訳ない気分になった。

「鎌倉ん時のこと覚えてる?」

「あぁ、校外学習で。うん」


 蓮は隣に玲華が座れるように席を

つめてくれた。

「迷子になったのも覚えてる」


 玲華は照れくさそうに笑った。
< 12 / 56 >

この作品をシェア

pagetop