清皇学院記
 既にチャイムが鳴っていたらしく、

李緒はあわてて席についた。

「気をつけ、礼。おはようございます」


 日直の号令で挨拶をする。

「今日の予定は時間割どおり、A日程。

放課後に学級委員会があります。選曲

をするので、科野と森山は残るように」


 倉峰が淡々と今日の予定を説明し、

玲華は返事をし、もう一人の

学級委員は少し遅れて返事をした。

「これにて終了。号令」

「気をつけ、礼。ありがとうございました」


 玲華は見えないところでガッツポーズを

取っていた。選曲なら、下校時間が遅くなる

ことを確信した。


 この学院は何でも大掛かりにしようという

理事長のモットーにより、選曲は50曲くらい

の中から選ぶという。実際に去年、玲華は

学級委員をしていたが、そのときも、曲の

多さに驚いた記憶がある。

「(やった)」


***


 玲華の予想が現実となった。


 今は放課後、教室で森山と二人で

選曲をしている。

曲は全て30曲。去年は3日がかりで

選曲したのだが、途中、どんな曲が

あったか忘れてしまうため、数が減った

のだと、倉峰から報告された。

「いやいや、これでも忘れるから」


 森山は指で机を叩き、独り言を言った。

「今日じゅうに終わらせるから」


 玲華は今、実に上機嫌だった。

その理由は約2時間前にさかのぼる。
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