清皇学院記
 玲華はこんな状況になっても

ずっと蓮のことだけど心配していた。

どこで、どんな状態になっているのか

瀬戸に頼んで教えてもらうことも

できなくはなさそうだが、あいつに

助けを求めるようなフリはしたくない。


 15分くらいして、瀬戸が部屋に

戻ってきた。玲華はそっちを見る

気にもなれず、ただ床をずっと

見つめていた。

「ほら、食べろ。お腹空いただろ」


 瀬戸が手に持っていたのは、

コンビニのパン。玲華は喉に通り

そうになかったので、

「結構です」


 と答えるしかなかった。だけど

瀬戸は無理やりにも玲華に

食べさせようとした。

「なぁ、食べろって。

少しでもいいから」


 瀬戸があまりにも強く勧める

ものだから、玲華は4分の1だけ

ちぎって食べることにした。


 味なんて全然感じなかった。

ただ、パンのような物体が口の中で

噛み砕かれているだけで。


「じゃあ、お茶飲んで、歯磨いて寝ろ。

俺はまた用事がある」


 瀬戸が指差した方向に、洗面所があり、

玲華は無心でそこに向かった。


 新しい歯ブラシが袋に入っていて、

玲華はお茶を飲んでから、歯を磨いた。
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