観察日記②
段々駅が近づいてきたが何の進展もなかった。

男は、相変わらず焦っているようだったし

女の赤く蒸気した顔は、恥らっているようにも、陶酔しきってるようにも見える。

その時、駅に着いたことを知らせるアナウンスが流れ右側のドアが開いた。

男はとにかく逃れようと、流れに乗って外に出ようとしていたが

いきなり女に手首を掴まれ、パニクッてオロオロしていた!

そして手首をつかまれたまま、女と一緒に降りる羽目に…

男は弱々しい声で『俺は何もしていない!あれは不可抗力だ』と繰り返していたが

可愛そうに、あまりにも小さなその声は誰の耳にも届かなかった。

人々はそんな二人を気にする人もなく、ただ忙しそうに改札へと消えていった。

これから、女はこの男をどうする気なんだろう。

このまま警察にでも突き出すのか!そう思って見ていると

そのまま人気のないホームの端に男の手を取って引っ張っていった。

気にはなるものの、人気のない場所に付いて行く訳にも行かず

そのまま目で追っていたが、運良く男は自販機の影に引っ張られて行った。

そのチャンスをな見逃すはずも無くジュースを買う振りして自販機の前に立った。

耳を澄ますと女が男を痴漢呼ばわりしてお金を請求している所だった。

気の弱そうな男は言われるままに財布から3万出すと女に手渡した。

俺は自販機に携帯をかざす振りをしながら、その決定的瞬間を写真に撮った。

缶珈琲を飲みながらその写真を確認すると、その瞬間がいい感じに撮れてる。

俺って天才!なんて思いながらその写真をパソコンにメールで転送しておく。

何があるか解からないので、万が一の保険だ!

これで、携帯が壊れようと、どこかで失くそうと写真は無くならない。

男は金を払うと俺を気にも留めず、何事も無かったように足早に通り過ぎていった。

さぁこれからどう出るかな?このまま写真を突きつけて女に迫っても良かったが

もう少し女の好きにさせてみよう!時間はたっぷりあるのだから。
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