観察日記②
俺は缶珈琲を飲みながら、足早に去っていく男をしばらく眺めていた。

可愛そうに!乗った場所が悪かったとしか言いようが無い。

男には同情しつつ、俺は横目で女の視線の先を捉えていた。

その先にいた者!それは、いかにも気が弱そうな紙袋を抱えた男

いわゆる、俗に言うオタクちゃんだ。

女は徐々にその男との距離を縮めていき次の電車が来る頃には

ピッタリと男の後ろをキープしていた。

やばいなぁサラリーマンの次はオタクかよ。すでに女の目は逝っちゃってるし…

大事にならなきゃいいけど!大体オタックてヤツは世間様の常識は通用しねぇし

大人しそうななりしてても切れたら怖いんだぜ。

大丈夫かこの女!その辺のことは頭に入れているんだろうか。

女はオタクと向かい合わせに乗り込むとしばらくその場の様子を

伺っていたが、ついに行動に出た。

まず、オタクの反応を伺うように自慢の胸を男の胸にグイグイと押し付け始めた。

男は驚いて体の向きを変えようとしたが、こう込み合っていてはどうすることも出来ない。

女の動きは段々とエスカレートしていき、終いには自分の股間を男の太ももに

擦り付け始め慌てた男は、手で払いのけようと必死になってもがいていた。

それを見た女は満足げに微笑むと、時折もがく男の手が股間に触れる

その度に甘いため息を漏らしていた。

大丈夫かなぁ!サラリーマンと違って、心底嫌がってるように見える。

とにかく携帯で写真を撮る俺の頭の中で嫌な予感と共に警報が鳴り響いていた。

俺の心配を他所に駅はすぐそこまで来ていた。


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