ブラックピース
 ペタペタ…… ペタペタ……

 怖いぐらい物静かな廊下に、僕のスリッパの音が響く。スリッパ意外の音といえば、外から聞こえるフクロウの鳴き声ぐらいだ。

 どのくらい進んだだろうか。自分の家のはずなのに、今どこにいるのか全く持って分からない。

 まぁ、暗いのだからそれは当然のことなのかもしれない。

 そもそも、こんな時間に1人で廊下を歩くのは、初めてだったりする。だから怖いと言われれば、否定は出来ないだろう。





 いつもは、隣にお父様がいた。寝ている僕をたびたび起こしては、自室に僕を連れて行くのだ。

 何をされるのかと身構えていえば、お父様は棚から無数の銃を取り出し、僕に見せる。

 満足げに自分のコレクションを僕に見せ、言うことと言えば眠くなるような長話。

「どうだい?? 銃は奥が深いだろう?? これなんかどうだ?? ふふん、こっちもなかなか捨て難い!! お、そうだ。1つ、いいことを教えてやろう。良く聞けルーラス、この銃はな、耐久性バツグンでさらに使い易さも最高でな、値段も手頃な上、原産地はなんとあの有名なヴァデイットなんだぞ。あそこで作られてる銃は特注品だらけで……あ、ヴァデイットがどこか知ってるか?? えーっと……地球儀はどこだー?? ……」

 しかもどんどん話が膨らんで、ずれて行く。一番呆れたお父様の飛び飛び長話は、始めが銃の話で、最後が世界の国々の政治体制について。

 そこに結びつくまでの繋がり性が一体全体どうなっていたのかは忘れてしまったが、えらくぶっとんでいた話だったのを微かに覚えている。

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