ブラックピース
「今帰りました！！」

　玄関ホールに響き渡る僕の声。暫くするとパタパタという足音を立てながら、誰かがやって来た。

　やって来たのは、お母様。

「お帰りなさい、ルーラス」

　お母様はそう言って柔らかな笑みを僕に向けた。

「ただいま、お母様」

　僕はお母様に笑顔を贈る。このほわほわ感がたまらなく好き。大好き。




言い忘れたけど、僕の家はとっても大きい。お爺さんが死んだ時、莫大な遺産をお父様に託した。

　お父様の話によると、お爺さんは貿易会社の社長だったみたい。そして今はお父様がその貿易会社を経営している。

　僕が生まれる前にお爺さんは死んでしまったから、どういう人だったのか良くわからないけれど、きっと良い人だったに違いないと僕は思う。

一方でお母様は、驚くべきことに王族の直系。それこそ、貴族の中の貴族だ。

　使用人も半端ないくらいいて、まだ会った事の無い人達もいっぱいいる。






「お父様はいつ帰るって？？」

　僕はお母様にそう訪ねる。するとお母様は眉間に皺を寄せながら答えた。

「うーん、夜かしら？？」

「……夕方に帰って来るって言ったのに」

「わがまま言わないの。　さ、紅茶でも飲んで今日の疲れを取りましょ？？」
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