ブラックピース
コポコポコポ……という音を立てながら、お母様が紅茶をカップに注ぐ。



 場所は変わってこちら中庭。

 中庭にはお母様始め、使用人達が手入れしている花がたくさん咲き乱れている。特に今の時期は、シクラメンが美しい。



 お母様は紅茶が入ったカップを、僕の目の前にコトリ、と置いた。

「今日の紅茶はアップルティーなんだけど……どう??」

 僕がカップに口をつけた瞬間、お母様が自信無さそうにそう聞いて来た。

 僕はカップをテーブルに置くと、咳払いをし、言った。

「上出来だよ」

「良かった……」

 お母様は椅子に深々と腰掛けると、安堵のため息を漏らした。

 お母様は色んな事を進んでやっている。

 この紅茶だってそう、お母様が自分で林檎を絞って、自分でブレンドして、自分で淹れたもの。


「良くやるよね、ホントに」

 僕は呆れ半分、尊敬半分な気持ちでお母様を見る。

「こういうのは、使用人達にやらせればいいのに」

「だって、他にやることがないんだもの」

 お母様はそう言って苦笑する。

「ま、本人がやりたいんだったら、やれば?? でも、使用人がいる意味が無くなっちゃうよ??」

「いいのよ。 使用人達には楽して稼いでもらいたいから」

 お母様はそう言ってふわりと微笑む。

「このお人好し」

 僕はピシャリと言った。
< 3 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop