魔女の瞳Ⅵ
朝にそんなやり取りがあったものの、その日はいつもと変わりのない平穏な一日だった。

いつものように修内太と一緒に屋上で昼食をとり、放課後、二人で教室を出る。

修内太が私の洋館に来るので、帰り道も一緒だ。

…朝はあんなに天気が良かったというのに、帰りにはどす黒い雲が空一面を覆っていた。

ヨーロッパの冬空に似ている。

私のあの頃のイメージがダブっているのだろうか。

ヨーロッパで魔女狩りから逃れながら生活していたあの頃は、空はいつだって黒い雲に覆われていたように思う。

「まずいな…傘持ってきてないや…」

修内太が空を見上げながら言う。

私の家で来客に会った後の帰りの事を考えているらしい。

「それまで雨降らずにもつかな…」

「あら」

私はクスッと笑う。

「傘くらい貸してあげるわよ。それとも泊まっていく?」

そんな風に言うと、案の定修内太は大袈裟なくらい過剰に私を意識してまくし立てた。

< 10 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop