魔女の瞳Ⅵ
けれど。

背後に立つ修内太を感じながら私は思う。

彼が人間でなければ意味がないのだ。

…たとえば魔女狩りの時代に、私が唯一心を許した人間、エリス。

手段を問わなければ、彼女を蘇生させる方法は存在した。

精巧な人形に魂を定着させるなり、死体を繋ぎ合わせた仮初めの肉体に魂を宿らせるなり、方法がない訳じゃない。

だけど私はそれをしなかった。

出来なかった訳じゃない。

そんな事をして蘇らせたエリスなんて、エリスじゃない。

彼女には普通の少女として、恋をして、結婚して、子を生んで、幸せで温かな家庭を築いてほしかったから。

魔女である私には叶う事のない、平凡だけど幸せな人生を送って欲しかったから。

それは結局幻に終わったけれど…まだ彼ならば叶う。

エリスの生まれ変わりである修内太。

彼ならば私の夢見た、平凡だけど幸せな人生を送る事ができるのだ。

その為にも、彼には人間として生きていて欲しい。

彼の隣に私が寄り添う事ができないのは、寂しい事だけどね…。

それでも、人間の道を踏み外し、私と同じ永劫の闇を歩ませるくらいなら、平凡な人間の女性と結ばれる方が何倍もマシだった。



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