魔女の瞳Ⅵ
「走って!」

私の合図と共に、修内太は全力で走り出す。

時折スピードを緩め、立ち止まろうとする度に。

「走って!」

私は振り向かずに叫ぶ。

止まらないで。

振り向かないで。

願わくば…もう私の事は忘れて。

人間として生き続けて。

エリスと同じ運命を辿らないで…。

「…悪い子ね」

修内太が去った後、私の前にはお母様だけが残る。

「貴女はこれまで一度だって、私の教えに反した行動をとる事なんてなかったというのに…」

「お母様」

私は右の呪眼でお母様を見据える。

「子供はいずれ自立するんです…親元を離れ、自分の人生を歩み出す…『限定』の魔術によってこの日本に来た時から…私は私の人生を歩き始めていたんです。だから…だからどうか…」

言いかけた私の言葉を無視して。

「メグ」

お母様は底冷えのするような声で言い放った。

「お仕置きしなきゃね…」

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