魔女の瞳Ⅵ
なりふり構っていられなかった。

「桜花!ジルコー!」

私は這い蹲ったまま叫ぶ!

「この人を…お母様を足止めして!」

とにかく今は時間が欲しかった。

蘭花に『念話』の魔術で連絡する時間。

切り離された上半身と下半身を繋ぎ合わせる時間。

修内太が蘭花の洋館に辿り着くまでの時間。

その為ならば、自分の無様な姿を晒しても構わなかった。

「お…お母様って…やっぱり…この方は…」

桜花が青ざめる。

先代デッドゲイト当主…サリィ・デッドゲイトと言えば、魔女の間では伝説的な存在だ。

そんな相手を足止めしろなどと言われても、普通は「はいそうですか」と頷ける筈もない。

しかし。

「おもしれぇ」

桜花の相棒は、そんな常識が通じる奴ではない。

「お前さんはゆっくり休んでな…スペアリブで手を打つ」

「…恩に着るわ」

『念話』の魔術の行使をしながら、私はジルコーに笑みを浮かべた。



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