魔女の瞳Ⅵ
桜花の盾となって魔力を枯渇させられたジルコーは、そのまま崩れるようにして倒れる。

「ジルコォォォッ!」

桜花が力なくグッタリとしたジルコーにしがみついた。

「いやあっ!ジルコーいやですっ!いやぁああっ!」

彼の銀色の体毛を握り締めて体を揺さぶるものの、反応はない。

二十近い光球…『枯渇』の魔術の直撃を食らったのだ。

極限まで魔力を吸い上げられた筈だ。

その命も風前の灯といえるだろう。

「諦めなさいな、桜花さん」

お母様が後味の悪そうな表情で言う。

「私に盾突いたとはいえ、ジルコー君は大した騎士道精神の持ち主だわ…貴女の身を案じて自ら『枯渇』の魔術の壁となるなんて…いいパートナーを持ったわね」

そんなお母様の言葉も、桜花には届かない。

桜花は今にも息絶えそうなジルコーの体を抱きしめ、ひたすらに泣きじゃくる。

「やだ…ジルコー…死んだらやだ…」

心から慕っていた相棒の瀕死の姿に、桜花は覚悟を決める。

「死なせない…どこにも行かないで…ジルコー…!」

< 45 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop