魔女の瞳Ⅵ
「     っ!」

桜花が高速詠唱を唱える。

同時に彼女の右手に氷の刃が発生した。

魔力を帯びた、切れ味鋭い氷の刃物。

彼女はその刃物で。

「!」

自らの長い黒髪を断ち切った。

桜花のトレードマークとも言える、長く美しい黒髪。

ジルコーがいつも褒め称え、いずれは貰うと公言して憚らなかった、魔力を帯びた魔女の黒髪。

桜花はその髪を自ら断ち切ると、束ねて息絶え絶えのジルコーの牙の隙間にねじ込んだ。

「ジルコー…目を開けて…貴方が欲しがってやまなかった私の髪です…いつか私の髪を食べて、魔力を高めるんだって言ってたじゃないですか…私の髪を食べるまで、どこにも行かないって言ってたじゃないですかっ…」

桜花の瞳から涙が零れ落ちる。

「ジルコー…目を覚まして…!」

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