魔女の瞳Ⅵ
ハーピー、或いはハルピュイア。

ギリシア神話に登場する女面鳥身の伝説の生物である。

その名は「掠める女」を意味し、顔から胸までが人間の女性で翼と下半身が鳥という姿の魔物。

脚部の鋭い爪と、空中での敏捷さを武器とする。

そんな魔物を、お母様は魔方陣で七匹も召喚し、いともあっさり使役した。

女の笑い声を上げながら、私に襲い掛かってくるハーピー!

『飛翔』の魔術を行使しているとはいえ、空中戦ではハーピーに敵う筈もない。

何しろ空中での戦闘は向こうが本職なのだ。

ならばこっちも、空中戦のプロを出すしかない。

「『飛翔』しながらじゃヤッツケ召喚しかないか…!」

私は術式を幾つも無視した簡易召喚魔法で、素早く魔方陣を描く。

「おいで!ワイバーン!」

空中に発動した魔方陣の中から出現したのは、獰猛な飛竜だった。

戦闘能力ならハーピーを上回る竜種の亜種。

その代わりお母様に劣る私では、ワイバーンを一匹召喚するのがやっとだった。

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