heaven


それは酷く紅いのである。

どうして、
どうしてこんなにも美しく
残酷なのだろう

鉄の臭いがする。

それはどんな花よりも美しく
 悲しい花だ


あれから二日がたった。
あの後も何度か空襲があって、
この町は焼けた。

けれど、幸運な事に……
といっては不謹慎だが。
シャーリィの住む地域は無傷だった。


敵機もここまで荒れ果てて
どうしようもなくなった町に攻撃しても
何の利益もない
爆薬や燃料の無駄になるだけだ
と言うことに留意したのだろうか。

けれど、あれから二日。

それは、約束の日。

あの書類に書いてあった
シャーリィが天国へ運ばれる日。


「シャーリィ」

キラが優しく呼びかける。
今日は町から離れた山里。
この山は空襲を受けた今も
強く実り続ける木がある。
その木の実を収穫するため、
シャーリィはたびたびこちらへやってくるのである。

シャーリィは振り返ると、
にっこりと笑った。
手にはたくさんの林檎を抱えている。
けれどその小さな足は、
小枝やガラス片、瓦礫で切れて
あちこちが血まみれになっていた。


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