heaven
「良かろう、知ってのこととは思うが、礼節は弁えねばな。
 わが名はルシフェル。
なんなりと申しつけるがよい天使長殿」
「……」

魔王の釣り上った口角から覗く犬歯
赤い瞳は強く光った。

「復讐を。そして、再生を」
何の迷いもなく澄んだ声で発せられた言葉に
ルシフェルの顔は驚きと関心で輝いた。
天使の唇からこぼれた音は 復讐。
低い声で紡がれたもっとも願ってはならないもの。

「復讐はともかく、再生、か?」

どこでその噂を聞きつけたのかねぇ、とルシフェルは笑い、キラに背を向けた。

陶器のように白い指先に、炎を灯す。
ゆらゆらとゆらめく影が不思議な形を形成した。

「どこでも、構わないだろう」
「まあ、そうだな」
「死者を呼び戻すすべがある、
それは真実か」
「ああ、私は偽らない」

その噂、とは、対価の血・命により死者をよみがえらせる呪術
それをなせるのは王、ルシフェルであるということ。

「対価はいくらだ」
「持ってくる覚悟はあるのか」

キラは迷うことなく間髪入れずに
瞳に一点の曇りもなく答える。

「もちろん」

ルシフェルは振り向くと囁いた。

「そんな事をしてはお前の身分、
命が危ないのではないかな?」

振り向いたルシフェルは美しい女の姿だった。
誘惑するかのようにキラの顔を両の手で包み、笑う。


< 46 / 56 >

この作品をシェア

pagetop