heaven
ルシフェルが指先にともした炎に幻影が見える。
賊に襲われ、羽をナイフで切り取られる瞬間が見えた。
思わず目をそらすが、声が聞こえた。
いつもは気丈な彼の悲痛な叫び声と、
咳きこみ吐血する声とが交互に聞こえる。
写りこんでいる賊の顔が歪んで見えた。

「……私にはゲームにすぎない」

ルシフェルは炎を掌で握り、もみ消して笑った。

「このような下賤の民の命など、ジャンクフード以下だと言っているんだよ。
 本来なら、いらない。だが、君に科す対価としてはまあ、ちょうどいいだろう」
「いらないものなのだろう」
「ああ、私は ね。
使い魔の餌にでもすれば餌代が浮くかなと思って」

にっこりと笑うとどこからか
大きなカラスが飛んできた。
バサバサと羽音を立て、
ルシフェルの前に舞い降りる。

「かわいいだろう。クロちゃんというんだ」
「……」

カラスは大きな瞳でこちらを見据えていた。

「クロちゃんの5日分のごはんにはなるかな?」

はっは、と笑うとカラスは一声だけ嬉しそうに鳴いた。

「こいつが」
「クロちゃんだ」
こいつといったのが気に食わなかったのかいさめる様に訂正する。


< 48 / 56 >

この作品をシェア

pagetop