【短編集】communication
俺、灰二。


いつも同じ時間の一番前の車両に乗る彼女を見ていた。


いつも一人で本を読んでる。


名前も何も知らない彼女に一目惚れした。


いつもなら、気軽に話しかけたりできるんだけど。


今回は、なぜかできない。


自分の本気を実感する。


「あぁー。今日電車乗れねぇ。」


俺は、ちょっと荒れていた。


今日は、彼女の乗る電車に間に合わない。


居残りかよ。


「灰二、残念だったな。愛しの彼女に会えなくて。」


ニヤニヤしながら、ダチの典弘は言った。


「残念ね。私、早いから、会えるわ。わぁ〜。楽しみ。」


典弘の彼女の奈美は、楽しそうだった。


「じゃあな。灰二頑張れよ。」


典弘と奈美は、帰って行った。


「あれ?灰二、珍しいじゃん。」


「仁菜。」


「今日は、愛しの君に会えないのね。」


仁菜は、からかうように言った。


「お前まで知ってんのかよ。」


灰二は、呆れた。


「典弘が言わないわけないでしょ。」


「そうだけどよ。てか、お前はなんでいるんだ?」


「今日は、先生の手伝いよ。灰二とは、違うのよ。じゃあね。」


そう言って、仁菜は、まだ予定があるようでいなくなった。


「明日こそ、彼女に会うぞ。」


俺は、気合いを入れなおして、プリントを取り組んだ。
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