【短編集】communication
「沼田、おはー」


「寺井、おはよう」


私は、好きな人に名前を呼んでもらいたい。


けど、彼は私を好きじゃないから。


あなたが名字なら。


私も名字。


みんなが羨ましいよ。


名前で呼んでもらえるし。


名前で呼べる。


なんで、私だけ?


逆に特別なのかなって思ったよ。


けど、あなたの視線の先はいつもあの子。


私が近くにいても、遠くのあの子。


つきあい始めたとき、気が狂いそうだった。


私は、はじめて嫉妬を知った。


あの子は、別に好きな人がいるから大丈夫だって、思ったのに。


男と女ってわからないな。


けど、すぐに別れた。


そして、あの子は本当に好きな人とつきあいだした。


許せないよ。


なんであいつも変わらずいるの?


わからない。


わからないことだらけ。
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