【短編集】communication
放課後。


私は、夜都くんとすぐに教室を出た。


まさか、クラスでスゴい騒ぎになっていたなんて知るよしもない。


それが、隣のクラスの悠太まで伝わっているなんて思いもしなかった。


あと、夜都くんの決意も知らなかった。


帰り道。


「うたは、悠太とまだつき合ってんのか?」


突然、夜都くんから聞かれた。


「たぶん。つき合ってるけど、もうダメみたいだよ。」


なんか、自分で言って落ちてきた。


やっぱ、みんなには別れたようにしか見えないんだね。


「じゃあさ。俺なんてどう?」


夜都くんは、笑顔だった。


「えっ?」


私は、テンパった。


てか、冗談?


「俺さ。うたの事、好きなんだ。」


「わ、私は....」


「うた、とりあえず聞いてよ。俺、すげぇ、好きな子いたんだよね。事故で亡くなっちゃったけどさ。そのショックな時にうたの言葉が心に響いた。」


「私の言葉?」


知らないよ。


「あぁ。『生きてる人が幸せじゃなきゃ。亡くなった人は幸せになれない。』って。俺、救われたんだ。あいつさ。最後に言ったんだ。『私の分まで幸せになって、じゃなきゃ、私は死んでも死にきれない』ってさ。」


「私、おばあちゃんに言われたんだ。それで、悲しむだけじゃ、ダメなんだって気づいたの。」


嬉しいな。


私の言葉で救われた人がいるなんて。


「それでな。うたに惹かれていった。」


夜都くんの真剣な言葉に気持ちが揺れた。
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